鬼界ヶ島に流された、俊寛、康頼、成経の三人は、 少将の舅、宰相教盛の領地である肥前、鹿瀬庄《かせのしょう》から、 何かにつけて衣類や食物を送らせるように手配して呉れたおかげで、 どうやらこうやら生きることだけは出来たらしい。 康頼は、かねてから出家の志を持っていたが、 流罪の途中、周防《すおう》の室積...
内大臣は車中で娘の恋愛のことばかりが考えられた。 非常に悪いことではないが、 従弟どうしの結婚などはあまりにありふれたことすぎるし、 野合の初めを世間の噂《うわさ》に上されることもつらい。 後宮の競争に女御をおさえた源氏が恨めしい上に、 また自分はその失敗に代えて あの娘を東宮へと志していたのではない...
福原に着いたのは、六月二十二日である。 一応 備中国《びっちゅうのくに》に流罪と決まり、 瀬尾太郎兼康が警備の任をおびてゆくことになった。 兼康は、とかく、 あとあと宰相から恨まれるのがこわいから、 かゆいところに手の届くような労《いたわ》り方で、 少将の心を何とか慰めようとするのであるが、 少将の方は...
宿所に帰った重盛は、主馬判官盛国を呼びだすと、 「唯今、重盛が、天下の大事を聞き出して参った。 常日頃、重盛のために命を惜しまぬ者があれば、 急ぎ集めるように」 といった。この知らせがたちまち広がったから、 日頃、物事に動じぬ人のお召しというので、 まさに天下の一大事とばかりに、 誰も彼も、おっとり刀で...
重盛は、烏帽子に直衣《なおし》という平服姿で、 さらさらと衣ずれの音をさせながら、 終始、落着き払って、清盛の座所にやってきた。 重盛の到着を聞いた時から、 「あいつのことだから、又じゃらじゃらした平服姿で、 わざとやってくるぞ、少しは意見してやらねば」 と思っていた清盛だったが、わが子とはいえ、 一目...
「こちらへ」 と宮はお言いになって、 お居間の中の几帳を隔てた席へ若君は通された。 「あなたにはあまり逢いませんね。 なぜそんなにむきになって学問ばかりをおさせになるのだろう。 あまり学問のできすぎることは不幸を招くことだと 大臣も御体験なすったことなのだけれど、 あなたをまたそうおしつけになるのだね、...
姫君がこぢんまりとした美しいふうで、 十三絃《げん》の琴を弾いている髪つき、 顔と髪の接触点の美などの艶《えん》な上品さに大臣が じっと見入っているのを姫君が知って、 恥ずかしそうにからだを少し小さくしている横顔がきれいで、 絃《いと》を押す手つきなどの美しいのも 絵に描いたように思われるのを、 大宮も...
大学へ若君が寮試を受けに行く日は、 寮門に顕官の車が無数に止まった。 あらゆる廷臣が今日はここへ来ることかと思われる列席者の 派手《はで》に並んだ所へ、 人の介添えを受けながらはいって来た若君は、 大学生の仲間とは見ることもできないような 品のよい美しい顔をしていた。 例の貧乏学生の多い席末の座につかね...
丹波少将|成経《なりつね》は、 その夜、院の御所の宿直で、まだ家には帰っていなかった。 そこへ、大納言の家来が、急を知らせにかけつけてきた。 始めて、事の子細を知った少将の驚きも深かった。 それにしても、宰相《さいしょう》殿から、 何ともいってこないのは変だ、と思っていた矢先、 宰相からも使いの者がと...
大河ドラマ「光る君へ」(2024年) @nhk_hikarukimie 躍動せよ!平安の女たち男たち!主人公は紫式部、千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を書き上げた女性。光源氏=光る君のストーリーの原動力は秘めた情熱とたぐいまれな想像力、そして一人の男性・藤原道長への想い。変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に...
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